花ト囮 感想

やっと下書き終わったー!DAZZLE第3回単独公演、【花ト囮】。今回も検討違いのあらすじと感想だったら顰蹙ですが、こみのんがどう感じたかの自分メモなんで勘弁してくらさい(だって書いておかなきゃ忘れちゃうんだもん‥)。
二人の兄弟が仲睦まじく歩いている。ふいに足を止める弟。この森を抜けると兄弟は離れ離れにならなければならない。村のある儀式により特別な血の持ち主に選ばれた弟は、村一番の富豪の家に奉公することが決まっていた。選ばれた血の持ち主がその館に行く事は館の主の命令でもあり、村の暗黙の了解になっている。そこへ行けば恵まれた生活が約束されているにもかかわらず、兄と離れることを嫌がる弟の気は進まない。あと少しで森を抜ければその館へ到着するという頃、晴れ間にもかかわらず突然の雨に立ち往生した兄弟の前にこの世のものとは思えない摩訶不思議な一行が現れる。この世とあの世の狭間を練り歩くと言われるそれは言い伝えとして語られる“狐の嫁入り”であった。狐たちに追われ、必死に逃げ回る二人の兄弟。けれど兄が一瞬、手を離した隙に弟と狐の一行は姿を眩ませ、森に残されたのは兄ひとり。今見たものを信じきれない兄だが、どんなに探しても弟が姿を現すことはなかった。失意のうちに兄がたどり着いたのは弟が行くはずだった館。特別な血の持ち主でない兄を選ばれた弟と誤解した主に真実を告げることが出来ず、兄は自分の素性を偽って弟の代わりにその館の住人となった。主に問われ、兄が名乗った名前は「サイヒ」。弟が戯れに書いた「花」という字を形成するコトバだった。
その館の主には一人の息子がいた。館に訪れた霊能者や修僧者や占い師がひと目見るなりひれ伏したという特別な力を持った息子。けれどその息子は数年前から原因不明の病を患っており、今では指一本さえも自分の意思で動かすことが出来ない。サイヒ(⇔才秘)が命じられた役目はその息子、霧月に自らの体内を流れる特別な血を分け与え、霧月生き永らえさせること。けれど才秘に流れる血は選ばれた特別な血ではない。無意味な事と知りつつも血を与え続ける才秘にある日突然、霧月の感情が伝わり二人は心を通いあわせることとなった。そして才秘は霧月から多くの事実を知らされる。霧月の内に流れる才秘の血が多くなってきたことで、より霧月が才秘に近くなり言葉を交わすことが出来るようになったこと。選ばれた特別な血ではない才秘の血が与え続けられたことによって自分の命はもう長くないということ。自分は原因不明の病ではなく、昔身体の弱かった母の病を移す依代として作られた人形を取り返したことによる蜘蛛の呪いだということ。特別な力を持つ自分が生き続ける限り、この館は繁栄し村も安泰になるということから自分の父が特別な血を持つ人間を犠牲にしてまで自分を生かし続けているということ。自分が亡くなった後は生き別れた弟を探し出せという言葉を残し、自分に死を与えてくれた才秘に感謝しつつ霧月は息を引き取る。最後にもう一度だけ月を見たいというささやかな霧月の望みは才秘の必死の努力にもかかわらずあと少しという所で叶えられることはなかった。
霧月が亡くなったことで偽りの血を与えた事が発覚し、才秘は霧月の葬儀に参列することさえ許されず館の牢に幽閉される。弟も霧月も救えなかった才秘はただ牢の外の世界へ出る事だけを夢見て日々生き続けた。いつしか牢の片隅に巣を張り住み着いた蜘蛛に才秘は語りかける。『お前が呪いをかけた霧月を死なせてしまった自分に何故呪いをかけようとしないのか』と。すると蜘蛛は驚くべき真実を語り始めた。“狐の嫁入り”を目撃してしまった才秘はすでに狐たちに狙われている為に蜘蛛の呪いをかけることが出来ないということ。その昔、この村を干ばつが襲った際に村人たちが村一番の若者を狐の婿に差し出し、嫁入りした狐を殺して雨乞いの生贄に差し出したことによって雨を得たこと。それ以来、狐たちは人間を憎んでおり“狐の嫁入り”を目撃した人間を連れ去ってしまうようになったが、才秘が狐の手から逃れたことによって狐の呪いが干ばつとなって村を襲い、才秘がこの館に来て以来1滴の雨さえも降らせなくなったということ。弟や霧月を救うことが出来ず、そして今度は村全体を危機に陥れている自分に気付いた才秘は蜘蛛にある提案を持ちかける。『お前が霧月に奪われた、霧月の母親の人形を取り返してやるから自分をこの牢から出してくれ』。蜘蛛のチカラを借りて牢から出た才秘は館の主の部屋で、霧月の母がとうの昔に亡くなっており、主がまるで霧月の母が生きているかのように母親の依代の人形に話しかけていた事実に愕然とする。どうにか人形を持ち帰り、蜘蛛のもとへ戻った才秘に蜘蛛はいたく感銘し、才秘が狐たちの元から無事に帰れるようにと狐たちからは母の人形が才秘の身代わりに見えるようまじないをかけ、あの世とこの世の狭間から迷わずに帰って来れるよう細い1本の糸を紡ぎ出し才秘に与えた。
蜘蛛の元を離れた才秘に群がるたくさんの狐たち。その中に才秘は離れ離れになった弟の姿を見出す。けれど弟は身も心も狐に取り込まれてしまったのか才秘の必死の呼びかけにも全く反応しない。そんな弟に才秘は“狐の嫁入り”を目撃し、狐たちに追われ逃げ惑う弟の手を離してしまったこと‥特別に選ばれた立場の弟に嫉妬してしまったことで弟ひとりをこんな目にあわせてしまった自分の行為を心から詫びた。
一方、館では蜘蛛が細い糸を手繰り続けていた。細い、細いこの蜘蛛の糸では弟を連れた才秘を引き寄せることは出来ない。愛する才秘が還ることを願いつつ糸を手繰る蜘蛛の元に引き寄せられたのは蜘蛛がまじないをかけた霧月の母の人形のみだった。
‥‥二人の兄弟が仲睦まじく歩いている。抱きしめられた弟が兄に伝えた最後の言葉は『身代わりになって館へ行ってくれてありがとう』という感謝の言葉だった‥。


っと、こんな感じのお話でした。今回は今までに比べてストーリーが分かり易かった!その分、踊ってるシーンでも今がどんな状況?とかどんな感情??ってのが想像し易い。今までDAZZLEさんて洋風なイメージが強かったのだけどこの舞台を観てそのイメージは完全に払拭されましたね、超〜似合ってんじゃん、DAZZLEで和モノ!!これで海外公演なんてやったらすごい反響あると思う。DAZZLEさんが生み出す幻惑的な世界と東洋の神秘とのグッドコラボですよ!秋にやったショーケースは殆どこの公演のイメージに則ったモノだったんですね。今回の舞台で使われた4枚の大きな障子がもんのすごい効果を生み出してて、障子の向きや動かし方、開き方、そして踊り手である家人の動きによって広い日本家屋が鮮明にイメージできました。障子に映る影なんかもね、とてもリアルに美しく恐ろしく表現されてました。シルエットからでも強烈に伝わる達也くんの麗しさには驚愕モノです、人外の美しさだアレは。才秘を追い詰める狐の影なんて夢でうなされそうなくらいに怖かったもん。そうそう、怖かった狐といや狐の嫁入りのシーンで先頭にいた狐(しんじくんかヤスくんかな?1回しか観てないからわからん)の動きがほんっと獣みたいですっげー怖かった。霧月が見た夢に出てくる蜘蛛を演じてたときのヤスくんも超恐ろしかったけど‥ヤスくん、あーゆうの躍らせると本当に際立つなぁ。蜘蛛が脚を動かすように指を床に這いずるシーンなんて鳥肌たったよ。iitai ienaiのときも机の下で指を這いずらせる動きがものすごいインパクトだったんだけど‥指の動きだけでもあの表現力‥!いやぁスゴイです。あとすっごい気に入ったのが村人の雨乞いの踊り。最初と最後にしんじくんがセンターで踊ってたナンバーなんですがこれもすごい迫力だった。傘を使った狐の嫁入りのダンスも以前D.D.Rで観た以上にグレードUPしてた!!そしてその素晴らしいダンスの魅力を何十倍にも引き上げてくれるあの音楽の素晴らしさといったらもう言葉に言い表せない。DAZZLEさんの音楽っていつも同じ方が作ってるのかな?旋律ひとつ取ってもDAZZLEっぽさが現れてる。物悲しい音も、苦しくなるような重厚感のある音も、脳をチクチクかき乱されるようなノイズの音も、軽やかでコケティッシュな音ひとつさえ全てがDAZZLEのイメージにピッタリ。そしてその素晴らしい音楽だけでなく、耳が痛くなるほどの無音の世界をも自分たちの踊りに同化させてしまうDAZZLEってほんとドラマティックですごい。も、完全に飲み込まれました、あの世界に。同じ踊りを踊るのってDAZZLEさんの公演では定番なのかな?初見ではどういう意味なのか分からずに観てたダンスが物語り進むにつれて意味を現してきて、後で同じダンスを見たときに「そーゆー意味だったのかー!?」ってガツーンとくるとこが恐るべきDAZZLEマジック。今回も堪能させていただきました、ドップリとね。
もし、才秘が弟の手を離さずにいて弟が館に奉公したとしたら、いずれ弟は命を失って霧月はまた他の誰かの血を糧に生き永らえ、誰ひとり幸せになれなかったかもしれない。そんなifストーリーを考え始めたらキリがないんだけど、それでも考えずにはいられない。結局、今回の結末がいちばん幸せだったのかもしれないなー。霧月は自らの望み通り死ぬことが出来たし、この世に戻ることは出来なかったけど才秘と弟は再びめぐり合うことが出来て、多分これからはずっと一緒でいられる‥だけど、何かね、切ないね(涙)。
最後の弟の言葉、一緒に観たちゃきんぐとも言ってたんですが心からの感謝とも、多少の皮肉とも受け取れるなって感じるのは深読みしすぎでしょうか。呪いをかけた霧月や、愛する才秘を失って人形しか残されなかった蜘蛛が哀れだな、とかやっぱりアフターストーリーが気になるDAZZLEの舞台。やー、またしてもヲタ心を刺激されまくりでした。毎年後悔するんだけど、せめてあと1公演観てくればよかったなー!絶対いろいろ見逃してるもん、あたし。
千秋楽を観たのですがカーテンコールで皆さんが‥とくにキンタさんが必死に涙を堪えてて、溢れ出してしまった姿を見て、この舞台にかけた意気込みとや苦労や達成感‥きっと計り知れないほどのたくさんの想いが皆さんの中にあっただろうなと感じ、手がもげるほど拍手しました。ほんとに、本当に素晴らしかったです。DAZZLEの皆さん、また次の公演も首をながーくして待ち望んでます。お疲れ様でした!そして素晴らしい時間をありがとうございました!!